このコップは、太陽神アポロン、勇者ヘラクレス、
酒神バッカスなど幾多の神の持ち物であると言われていますが、
その中のひとつ、魔女メディアのギリシア神話です。


魔女メディアは、もともとコルキス国の王女でしたが、
イオルコスの王子イアソン率いる アルゴ号 探検隊が黄金の羊毛を求めて
コルキスに来たとき、イアソンに激しく恋をしてしまいました。メディアは
イアソンを排除しようとする父王アイエテスに逆らい、イアソンを助けて
黄金の羊毛を手に入れ、彼とともにイオルコスへと逃れてきました。

その頃、イオルコスの国はイアソンの叔父ぺリアスによって
支配されていました。イアソンはぺリアスに
「約束どおり黄金の羊毛を持ってきました。王位を返して下さい。」
と言いましたが、王位を譲る気などまるでなかったぺリアスは、
イアソンの申し出を、約束など知らないと突っぱねました。

そこでメディアは策略をめぐらし、ぺリアスの3人の娘の前で
年老いた１頭の羊を若返らせる魔法を見せました。
この若返りの魔法とは、羊の喉をかき切って魔法の霊薬を血管に
満たし、ぐらぐらに湯を沸かした大釜で煮るという壮絶なものでした。
ですが、効果は確かなもので年老いた羊は見事に若返り、
大釜から飛び出して、3人の娘の前でぴょんぴょんと飛び跳ねました。
娘達からこの話しを聞いたぺリアスは、自分も是非
若返らせて欲しいと、メディアに頼み込みました。
これこそメディアの待っていたことでした。メディアはぺリアスの
喉を切り裂き、そのまま釜で茹でて殺してしまったのです。

この時にぺリアスを煮た釜が、コップ座になったと言われています。


この後、イアソンとメディアは叔父殺しの罪でイオルコスを追放され、
コリントス国に移り住みました。しかし、イアソンは妻の恐ろしさに
嫌気がさして、コリントスの王女グラウケと愛し合うようになりました。
メディアは怒りのあまりグラウケを殺し、自らは竜の曳く馬車に乗って
どこかへ飛んで行ってしまったのだそうです。