かに星雲の名で知られる天体で、最も目立つ超新星残骸です。かにの名前はロス卿が眼視観測で、何本もの突起が出ているのを見て名付けたものです。この星雲は1054年に超新星爆発が起こったときの名残りで、この星雲の中には、強力な電波源である中性子星(16等)があり、この中性子星から約30分の1秒ごとに電波やX線が放射され「かにパルサー」としても有名です。
西暦1054年に出現した超新星の残骸で、そのおうし座超新星の記録は中国、日本などに残っており、日本では藤原定家の『明月記』、中国の年代記には、「嘉祐元年3月(1056年3月19日〜4月17日) はじめ、この客星は、至和元年5月の朝には、東の守りである天関に現れ、四方に光を放ち金星のように昼も見えた。色は赤味がかった白であった。これは、23日間昼の天体として一緒に見えた」と、記されています。また、アメリカ・インディアンの壁画からも、月との位置関係から計算すると、この年、新星爆発を描いたと推測されるような絵が発見されているそうです。アメリカの天文学者バージニア・トリンブルの計算によると、この超新星の極大時には、絶対等級が少なくとも-16等から-17等という、太陽のおよそ4億倍の明るさで、2〜3週間もの間輝き続けたと考えられています。
また、メシエカタログの1を飾るこの天体は、1731年に、イギリスのアマチュア天文家のジョン・ベービスによって発見されましたが、この27年後、メシエカタログで知られる、シャルル・メシエによっても発見されました。彗星探査をしていた彼が、彗星と混同しないようにと、このあまりにも有名な天体カタログの編集を思い立つきっかけになった天体です。
今この残骸は、私たちの銀河系内で知られるどの速度よりも早い「およそ8.000万km/日以上」という猛スピードで膨張を続けています。
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