冬の夜空を飾る、勇者オリオンの剣のあたりに位置する有名な大散光星雲で、1611年に、ニコラス・ペイレスクによって発見されました。
オリオン大星雲として知られるこの星雲は、縦に並ぶ小三ツ星の真ん中の星、θ星(四重星)を包む淡い輝きを肉眼でも確認することができます。
小望遠鏡では、この星を囲む明るい緑色の雲のように、大きい望遠鏡では、蝶が透明な緑色に輝く羽を広げたような、美しい姿を見ることができます。
眼視で見えるこの緑がかった色は、電離した酸素による非常に強い輝度から生じたものですが、眼視では捕えにくい赤い水素領域の微小な光さえも蓄積して写し出すカラー写真などでは、華麗なピンクがかったような色合いとなります。
この星雲は、巨大な光るガス星雲で、その全質量は、太陽のような恒星をおよそ1万個作れるほどです。
この写真に写し出されている星雲の直径は、およそ30光年と考えられていて、この数字は、太陽系全体のおよそ2万倍にも及ぶ巨大な星雲であることをしめしています。
この写真の一番明るい星雲中心部分の左のほうにある暗黒部分は、通称「フィッシュマウス」と呼ばれる部分です。
その左上に分離されたように浮かぶ丸い星雲部分はM43(NGC1982)で、8等級の中心星によって照らし出されています。
オリオン大星雲の中心部は星の生まれる場所として知られる水素領域で、この領域の中心部分に輝く4つの星々は、「Trapezium(トラペジウム)」 と呼ばる、生まれたばかりの星たちです。
その他にも、この星雲の中には、通称 「orion's monster(オリオンの怪物)」 と呼ばれる星雲域もあり、とても見応えのある星雲です。
この星雲に関連する多くの記述が残されているように、昔の観測者達も皆、現在の私たちと同じように様々な想いを馳せながらこの星雲を見つめてきました。
1929年、ウィリアム T.オルコットは「大望遠鏡の中に見る、華麗で驚くべき光景。その美しさを述べる十分な言葉はない」と書き記し、
ドイツの天文学者J.E.ボーデは、「天界で最も美しい星雲..良質の望遠鏡ではθ(シータ)星が4個に輝く。それに続いて、3個の非常に小さい星があり..全部で7個の星が見える..
すべてが愛すべき星雲の淡い光のゆらめきの中に包まれている...」と。
イギリスの天文学者リチャード・プロクターを父に持つ、メリー・プロクターも、著書である「星の夜」の中で、「その星雲のもっとも輝く場所を見ると、それぞれの角に1個の星を持つ不規則な形の四辺形が、星雲の中の暗い隙間にある...この光る雲は、明るく輝く4個の星をかこみ、
緑色がかった色合いで、「オリオン星雲」と呼ばれる光の島と銀色の流れを持ち、不思議な影をかこむ湾を持つ巨大な恒星雲を見せる」と記しています。
あらゆる研究がなされ、少しずつこの星雲の謎が解明されてきている現代でも、
昔の人々が抱いたような、畏敬にも似た愛情を感じさせてくれる美しい星雲であることは今も変わりません。
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