【星座を構成する固有名のある星】
・α星(-1.5等)シリウス - Sirius
スペクトル型 A1Xm
全天で一番明るい恒星で、-1.5等の明るさで輝いています。
ギリシア語のセイリオス(輝くもの,焼き焦がすもの)をローマ文字にしたといわれていますが、
それだけではなく、夏至の頃、太陽がこのあたりに位置し夏の炎暑をもたらすことからもきていると言われます。
古代バビロニアでは、この星座は犬の姿ではなく、4分割される前のアルゴ座の一部を「弓の星」といい、
シリウスはその弓につがえた矢の先端に位置していたといわれています。
古代ギリシアでは、シリウスを犬の星としてキュオン(犬)と呼んでいました。
紀元前9世紀頃のホメロスの著作とされるものには、そのような形の記述が残されています。
日本では「大星(おおぼし)」「青星(あおぼし)」が一般的に呼ばれた名前で、
オリオンの後からついてゆくこの星を「三つ星のあとぼし」、こいぬ座のα星プロキオンが「白星」といわれたのに対して
「南の色白」と呼ぶ地域などもありました。
中国では「狼(ろう)」「天狼(てんろう)」と呼ばれていました。これは、シリウスの強烈な光の印象から狼の目を連想したものです。
そして、おおいぬ座β星を「野鶏(やけい)」と呼んでいたことから、
狼が鶏を狙って追いかけてゆく姿を想像したものではないかといわれています。また、「おおいぬ座ε,κ星と、とも座κ,ο,π星,無名の星1」
からなる形を中国では「弧(こ)」と呼んで弓を指し「おおいぬ座δ,η星,とも座c(NGC2451),f星」をそれにつがえた「矢(し)」で、
シリウスを狙っているような弓矢を想像し、合わせて「弧矢(こし)」と呼んでいました。
インドでは、ムリガ・ヤドハ(鹿殺し)といわれ、鹿の形をしたプラジャパティ(オリオン)が、
ロヒニ(おうし座α星)を追いまわしているのを射殺したと伝えられています。
古代エジプトでは、シリウスは夏至の日の出前に日の神ラーの光と共に東に昇り、
それがエジプトの母と崇められたナイル川の増水と重なるために、ソティス(水の上の星)と呼ばれ崇拝され、
この日がエジプトの元旦と決められました。また、時として女神イシスの星とも見られました。
これは、エジプトで夜明けの美しい星を愛と生命の星と考えたためで、
デンブラに建てられた神殿も元旦の朝に昇るシリウスに向け、その光が女神イシスの目にあたるように建てられました。
デンブラではシリウスを「デンブラの女王」と呼んでいたと伝えられています。
・β星(2.0等)ミルザム - Mirzam
スペクトル型 B1U-V
アラビア語のアル・ムルジム、「吠えるもの」または「予告するもの」という意味があります。シリウスが昇ってくるのに先立って
東の地平線を昇ってくることからこの名があるといわれています。
・γ星(4.1等)ムリフェイン - Muliphein
もともと、おおいぬ座δ星とはと座の星で構成される、アラビアの星宿アル・ムリフェインが誤ってこの星に与えられたもので、
この誤用はアメリカの天文学者パリットに始るといわれています。
・δ星(1.9等)ウェズン - Wezn
スペクトル型 F8Ta
アラビア語のアル・ワズン(重さ)で、「地平線から昇るのが大変そうな星」という意味でこの名前があるといわれていて、
この他にも、冬の南の地平線上低く見える星にはこの名前がつけられています。
・ε星(1.5等)アダラ - Adhara,Adara
スペクトル型 B2U
アラビア語アル・アダーラ(処女たち)で、本来この星だけを指すのではなく「δ,η,ο星」を含めた星々の名前だったのが、
この星の固有名になったものといわれていますが、これはα星シリウスとこいぬ座のプロキオンが、
りゅうこつ座のカノープスの娘達であるというアラビアの伝説と関連性があるものと考えられています。
日本では、「η,δ,ε」の3つの星を「三角」や、馬の背中につける鞍を掛けておく「∧」の台に似ていることから、
「鞍掛け星」とも呼ばれていました。
中国では、α星シリウスと合わせて「弧矢」といわれていました。(シリウス参照)
・ζ星(3.0等)フルド - Furud
アラビア名アル・クルドが訛ったもので、意味は(猿)です。これも本来は、「おおいぬ座ζ,λ星」
「はと座γ,δ,θ,κ,λ,μ,ξ星」の星々に与えられた名前だと言われています。
・η星(2.4等)アルドラ - Aludra
スペクトル型 B5Ta
アラビア名アル・アドラ・アル・ジャウザ(オリオンのおとめ)で、アラビアの伝説によるとスハイル(α星シリウス)が
おとめオリオン(η星)と結婚し、ε星の星々がその侍女達だと伝えられています。
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