うみへび座は春から夏にかけての夜空に見える非常に大きな星座で、
全天88の星座の中でこれほど長い星座は他にありません。
目立つのは蟹座のすぐ南で小さな6個の星がひとかたまりになっている海蛇の頭にあたる部分から、海蛇の心臓に赤く輝くα(アルファ)星アルファルドまでで、
後は、しし座、おとめ座の南側から、てんびん座近くまで達する胴体が長々と横たわり、これは、天球の円周4分の1以上にも達しています。
もっとも古い時代のうみへび座に関しての記述はバビロニアの古い星座図で、
カルデアあたりの人々によって星座の原形が作られたとされる紀元前3600年頃、すでにシール(蛇)として描かれていました。
当時のうみへび座は歳差運動のため、天の赤道上にあったことが計算上明かにされていて、
春の日没には南の中天に長々とかかっていたはずで、1等星こそありませんが巨大な蛇を思わせるには十分だったはずです。
ギリシア神話では、ヘラクレスの12の偉業のひとつだった、アルゴスの沼地レルネに住むたくさんの頭を持つ怪蛇ヒドラだといわれます。(ギリシア神話参照)
中国では、うみへび座が非常に長いので3つの星宿に分けて、頭の部分を柳の枝の巻いた形とみて「柳宿(りゅう)」と呼び、逸話も残されています。
唐の詩人白楽天の、長安の柳の枝が春風に吹かれ柔らかになびいているさまを歌ったものが、とても美しいものだったので、帝はその柳をわざわざ宮中に移し植えさせました。
それに感激した白楽天はさらに詩を作って「天もこれに感じて、この後、柳宿の星に柳の枝がふえるにちがいない」と歌ったといいます。
中国ではまた、この柳宿の形を鳥の形とみて朱鳥とも呼びました。これは鳳凰という鳥のことで、α星アルファルドの色が赤いことからきているといわれています。
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