* 第三章 * 悲しいクリスマス まだ夜になったばかりでした。 すべての子供達を祝福して、すべての家庭を訪れたにも関わらず、 天使の贈り物はまだほとんど減っていませんでした。 天使は悲しみに包まれ、目を見張ってある国を眺めました。 天使が見たものは・・・ 闇の中に延々とつらなるカラのゆりかご・・・ その中で微笑んでいるはずの子供がいない、カラのゆりかご・・ 小さいベッドは物置の中で腐っています。 子供の少ないその国では、全てが小さく縮んでいるように見えました。 家も・・食卓も・・人の心も・・・。 天使のその大きな目に涙が浮かびました。 「美しいが憐れな国・・」 天使は再び家ごとに開かれた、 お棺のように並ぶゆりかごの列を眺めて言いました。 「子供達のお棺・・これはこの国の未来の姿・・私はもうここに用がない・・・」 雪が降りしきる中を白い大きな翼を広げた天使は、 心を残しながら、他の国へと飛び立ちました。 天使は、大きな軽い一羽ばたきをして、他の国に止りました。 戦慄が走ります・・・この国にも長いカラのゆりかごの列・・・ 美しい天使は涙を浮かべながら天へ帰って行きました。 天国での報告と、幼いもの達のために胸を痛めながら・・・ それは悲しいクリスマスの夜でした・・。 |