第2章
・・・ベツレヘムの町で・・・







そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、

登録せよとの勅令が出た。

これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに

行われた最初の住民登録である。 

新約聖書ルカ2・1より


アウグストゥスは紀元前63年頃、

皇帝ユリウス(ジュリアス・シーザー)の甥として生を受けたが、

のちにシーザーの養子となる。

政治家として敏腕をふるい、西は現在のイギリス、

東はアジアに至る巨大な領土を掌握する勢力でした。



「ローマは世界である」とうたわれていた帝国に比べて、

ユダヤの国はとるにたりない植民地にすぎませんでした。

皇帝の勅令による人口調査は14年ごとに行われていたと言われています。

ユダヤ全土の人々もこれに逆らうことはならず、

仕事と居住地を離れて産まれ故郷に旅立ちました・・



すでに臨月に入っていたマリアにとって、ナザレからベツレヘムへ

家畜の背に揺られながら行く旅は結して楽ではありません。

しかも、ようやくたどり着いたベツレヘムの町は旅人であふれ、

騒然とした状況である。宿屋には彼らの泊まる場所がなく、

マリアとヨゼフが身を落ちつけたのは、町外れの洞窟。

むき出しの岩地で、内部は暗い・・家畜用に置かれてあった飼い葉桶は、

岩をくりぬくか、粘土を固めて作ったものでした。



この静寂な夜・・・誰一人気づく者のいない岩やで・・・

・・・神の御子がこの世に産まれたのです・・・



マリアは思い出した・・・

故郷のナザレで天使がもたらした神の言葉を・・・

神はご自分の御子に、輝くダビデの王座を約束されたのです。

そのお告げとは裏腹に、思いがけない旅先で生まれたみどりごは、

飼い葉桶に眠っている・・・




私は主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。

新約聖書ルカ1・38より



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