【星座を構成する固有名のある星】
・α星(-0.7等)カノープス - Canopus
スペクトル型 F0U
このカノープスの名前は、トロイア戦争でスパルタ王メネラオスの率いた軍隊の水先案内人を務めた人の名から
付けらました。トロイヤの滅亡の後、この艦隊がアレクサンドリア近くの港に寄港したとき水先案内のカノープスが亡くなったので、
王がその功績を惜しんでその港に彼の名前を付け、それが当時その土地で地平線上7度ほどの高度で南中していたこの星の
固有名として使われるようになったそうです。
アラビアでは、このカノープスのことを「スハイル」と呼びますが、これはアラビア語アル・サール(明瞭なもの)という意味で、
この星の明るさからきたものです。また、回教の教祖マホメットは、この星を自分の星だとして信仰していたので
アラビアの人々に「マホメッドの星」としても仰がれています。
中国では古くからこのカノープスを「南極老人星」と呼び、南の地平線低くこの星がみえることがあると、
その年は天下泰平であるとか、長寿にあやかれると言って祝ったそうです。逆にこの星が見えない年は、戦争が起こると信じられていました。
また中国では他に、おおいぬ座の尾の星とアルゴ座の一部の星とを結んで、弓に矢をつがえた形を作って「孤矢(こし)」と
呼び、その矢で天狼(シリウス)を射ているのだといわれていたそうです。
日本でも、中国の「南極老人星」という名で呼び縁起が良い星としてきましたが、
他にも、この星が見えると冬の嵐が来るという言い伝えから「布良星(めらぼし)」と呼び、冬のしけで難破して死んだ漁師の
魂の火だと言い伝えていたそうです。また、「淡路星」とか「鳴門星」「源五郎星」など、この星が見える方向の地名でよんだものも多かったようです。
・β星(1.7等)ミアプラキドゥス - Miaplacidus
スペクトル型 A2W
アラビア語のミアー Mi'ah(水の複数形)とラテン語の Placidus(静かな)を合わせたものとされています。アルゴ号が浮かんでいる静かな海の水を表すものですが、
日本からは地平線下で見ることはできません。
・ι星(2.3等)アスピディスケ - Aspidiske
スペクトル型 A8Tb
ギリシア語のアスピス(盾または歩兵)で、この星も日本から見ることはできません。
アルゴ号座と呼ばれた空域は、今のように4分割される以前にも、いろいろな星座が設定されていたことがあり、
このι星の辺りは、古代ローマ人がScutulum(小さい盾)と呼んだ星座の辺りにあたるとも言われています。
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